自民党・高市早苗議員を座長とするプロジェクトチームが、ネット上における青少年有害情報を規制する法案を準備していることが、一部報道で明らかとなった。
報道によると、同法案は携帯電話上での情報のみならず、インターネット上での情報掲示も対象とするものであり、広範な分野に対する規制が行われることになる模様だ。
生徒のサイト運営が困難に
同法案は、まず青少年有害情報を青少年が閲覧できないようにする措置を特定電気通信役務提供者に課している。したがって、一般のインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)やコンテンツプロバイダー、ウェブポータル会社の提供するブログやホームページサービスで作成された一般サイトに対しては、青少年ユーザーがアクセスする場合に、個人認証やその他のフィルタリング処理を行うことになる。
しかし、一般ユーザーの作成したコンテンツは書き込み等によって日々変化しており、それを全件有人監視している管理会社は存在しない。またNGワードフィルタリングによる不適切表現サイトの排除も不完全な状態であり、結局のところ青少年ユーザーは適切な情報が掲示されているサイトであっても、監視が行き届かないことを理由として青少年のアクセス自体を完全にブロックしてしまう事態が生じることとなりそうだ。当然のことながら、青少年ユーザー自身がサイトを持つことにも制限が加わる可能性が高く、特に文化祭サイトや部活動サイトなどにおいて、他者との交流を目的とする掲示板を設置することは難しくなりそうだ。
過去に闇駒においても犯罪予告が書き込まれたことがあったが、現役生徒と先生の皆様の協力により、事態を悪化させることなく対処することができた。さらに不適切な書き込みを行った生徒と、OBや上級生との間で激しい議論(議論であって誹謗中傷合戦ではない)が起きたこともあったが、先生方の間では、「社会を知らなすぎる今の生徒が、合理的な言論によって批判されることで、社会を学ぶとてもいい機会になっている」との声もある。青少年ユーザーとそれ以外のユーザーとを一切接触しないようにすることで青少年の健全育成を図る、同法案の根本的な手法に強い疑問がある。
なお、闇駒のようなサイトは、レンタルサーバー会社からアクセス環境のみを借りているだけであるため、管理人が特定電気通信役務提供者ということになる。したがってISP等の自主規制により、青少年ユーザーが強制排除されるという事態は生じ得ないが、青少年ユーザーが青少年有害情報に接することの無いようにする義務が発生することになる模様だ。(ただし、同法案によると大人を含めてほぼ全てのPCにフィルタリングソフトがプリインストールされることになるため、形式上は「学校裏サイト」である闇駒がフィルタリング対象となり、会員認証どころかアクセスすらできないことになる可能性も高い。)
携帯利用にも影響
さらにこの法案では、青少年が携帯電話を使う場合に、携帯電話のフィルタリング機能を使う義務が発生し、現在のように利用を選択できる状態とは異なり、親や子がフィルタリング機能の利用を拒否することができなくなる。したがって、親が有益なサイトであると思ったものであっても、完全にアクセスが遮断される事態が発生することになる。高3ステージ班は特設携帯サイトなどを使って宣伝活動を行っているが、一切アクセスできなくなる可能性が高い。
現在の携帯電話会社が導入しているフィルタリング機能は、大雑把なカテゴリーごとにしかアクセスの可不可を設定することができず、また子の成長段階を無視して一律に18歳未満を閲覧禁止対象としているため、子どもが政党や観光名所の寺院の携帯版サイトにアクセスしようとしてもアクセスできないという問題が生じている。そのため、今だ欠陥の多いフィルタリング機能を義務化していくことには、大きな課題があるとの認識が広まっている最中であった。
困惑するネット業界
これに対してモバイルコンテンツ業界では、モバイルコンテンツ審査運用機構(EMA)を発足させ、大規模商用サイトを対象に一定レベルの監視・運用体制をサイトを認定して、閲覧禁止対象から外すための目印をつくる役割を果たすこととしていた。EMAは、有害であるかの判断は人それぞれであるとし、携帯を利用して他者とコミュニケーションをとること自体は自己の責任、親の責任であることを一番の基本に据えている。よって、コンテンツそのものの有害性の有無を認定するのではなく、コンテンツを管理する体制自体を審査対象とする方針とのことであった。
また総務省は「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」を発足させ、ユーザーの自己責任を基本としながら、現状では理不尽なほどの画一性、対象の広範性、青少年ユーザーの通常利用における利便性……の三点において課題が多い携帯フィルタリング機能を改善する必要があるとしており、携帯電話キャリアが民間の第三者機関の認定を参考にし、さらに「マイホワイトリスト」という形で自主的に選択できるようにする方向性を示している。EMAの動きと符合する形で一定の落としどころを探っている状況と言えそうだ。
同法案ではマイホワイトリストが実現しても、サイト側での認証がなされる可能性が高く、また上記のように特定電気通信役務提供者が一定の遮断措置を迫られる以上、青少年ユーザーが他者とコミュニケーションを取ること自体が禁じられる可能性が高い。自己責任と自律的な選択を根本に置く考えに逆行するどころか、フィルタリングの課題面についての様々な検討結果を無視するものであり、モバイルコンテンツ業者のみならず、ユーザーの間でも批判が強まりそうだ。
成立は不透明
同法案はゴールデンウィーク前後に議員立法の形で提出する見込みであり、官邸サイドも積極姿勢であるとの報道もある。ただし民主党の対案は、ユーザーや業者の自主的な判断と教育・啓発措置の充実を有害サイト対策の根本の発想に置いており、自民党案とは根本の発想に大きな違いがある。自民党案の内容ですんなりと国会を通過するかは不透明だ。